習字・書道教室を始めたきっかけはなんですか?

2020年のコロナが蔓延し始める前、私は宗教者(僧侶)として習字教室ではなく他の活動を始めようと思っていました。それが、コロナのためしばらくの間、延期となってしまいました。その時、地域の子ども達や大人の方も安全に集まれて、何か楽しめるものはないかと考えた時、飛沫が飛んだり、直接接触が少ない習字教室を少人数であればいけるのではないか!と考えて始めてみたことがきっかけです。コロナが流行しなければ、教室を開くことはなかったと思います。

教室名の「こうけん道場」ですけどね、「道場」というと何か厳しい教室なイメージもありますけど。

教室名については、オーソドックスに「町屋・尾竹橋習字教室」とか考えなくもなかったです(笑)。「道場」については、浄土真宗本願寺三世の覚如(1270‐1351)が、改邪鈔 という書物の中で、「道場と号して簷(のき)をならべ墻(へい)をへだてたるところにて、各別各別に会場をしむる事」 と書かれていて、浄土真宗では小さくも、みんなで集まって念仏を称える場を「道場」と表現されてきたようです。なので、厳しい場、というよりみんなで気軽に集える場、という意味合いで「道場」としました。厳しい時もたまにはありますが。

ちなみに厳しい時とはどんな時に?

字が上手に書けないことで厳しくすることは絶対にありません。今、上手に書けなくても、その次の時に劇的に上手になっている時もあります。なので、字を書くことに関しては褒められることの方が多いと思います。厳しくなる場面は、子供の場合であれば、自分の級や段・賞を自分よりも下位の子に自慢し続けたり、騒いで他の子の邪魔をしている時などです。人の気持ちを考えることや、行儀の面で注意をします。大人の方の場合も同様です。

そうすると、大人の方と子どもは同じ時間に練習しているんですか?

子ども達には原則明るいうちに来て、暗くなる前に終わるという時間帯で、大人の方は夜間を中心に来ていただいています。子どもと大人の生徒さんが同席することは、ご家族で来られている方を除いては、ほとんどありません。

都度予約制にしているのはどうしてですか?

月謝制で曜日や時間が固定になると、来られなくなった日の分を振り替えたり、場合によってはそのまま消化してしまうことが継続を困難にしてしまうのではないかと思いました。また、モチベーションもそれぞれ異なるので、月に1回で満足する生徒さん(1回しか来たくない子)や毎週熱心に通われる生徒さんもいらっしゃいます。でも、家族の用事、他の習い事の発表会、学校行事等で来られない等の状況も必ず発生しますので、予約サイトから毎回予約をしてもらうようにしています。キャンセルも直前まで受け付けていますので、キャンセル料も発生しません。無連絡欠席の場合のみキャンセル料を申し受ける形です。

※令和5年度より、「月会費制」(月謝制)に変わります。都度予約制に変更はありません。

先生が子どもだった頃は月に何回くらい教室に通っていらしたの?

毎週日曜日、午前8時30分から11時30分くらいだったと思います。

長いですね。それはスパルタかしら?(笑)

スパルタといえばそうなるかもしれませんね(笑)。教室についたら、土下座して「よろしくお願いします」から始まり、先生に「よし!」と言われるまで書く、という感じだったと思います。上手く書けないと、大きな声で怒られました。なので、シクシク泣いている子もいました。その点では、楽しかったという思い出ではないように思います。

それなのに続けて良かったと思えるんですか?

そうですね。具体的に良かったと思えるようになったのは、大人になってからかもしれません。年賀状の表書きは、PCのソフトで印字できる時代になってからも筆で書いてきましたし、慶弔の封筒の表書きなんかもそうですね。「字が上手なんだね!」と言ってもらえることが多かったです。一番、印象深いのは若いころ転職の際に、ダメもとで受けた有名大企業の三次面接の時に、人事部長が履歴書の私の字のことばかりしか話さないんですね。あれ?他に魅力はないのかな。。。と(笑)。それでも、採用された時は「字で語るものがある」と実感しました。

先ほど、字が上手に書けなくても厳しくしないとおっしゃいましたが、厳しい教室で教わったのにどうして?

中には、添削を嫌がる子もいます。誰でも直されることは多少は嫌な気分になると思います。そこは、時代に合わせて、といったところでしょうか。ただ、直されることをよろこんで、そして直ぐに取り入れようとする生徒さんほど上達が早いのは事実かと思います。個々に合わせたかかわりを持つことを心がけています。

ところで、釋康絢というお名前はめずらしいですね!

ペンネーム、いや「筆ネーム」ですね。正確には「法名」といって、僧侶として、仏弟子として賜った名前を使わせていただいています。

じゃぁ、本名は明かしてないんですか?

教室にかけてある免許状の額は本名で揮毫されているので、明かしていないわけではないんですよ。でも、「こうけん先生」と呼ばれることが多いですね。

この先、お教室をやっていくうえで何か目標みたいなものはありますの?

実現したいことはあります。教室と生徒さんの自宅間を車で送迎するサービスです。

結構遠くから通ってくださっている生徒さんがおられます。隣接区、または荒川区内でも町屋エリアからアクセスが不便なエリアなどです。小学生の場合は、ご両親が自転車、距離によっては車で送り迎えをしてくださっていて、毎回頭が下がる思いです。

収支の状況として今は難しいのですが、生徒数が100人前後まで増えた時には送迎サービスを実現させたいですね。ただ、実際にはあと何十人も生徒数が増えないと運用は厳しいです。。。長く無理なく続けていただけるよう、親御さんの身体的な負担を少なくしたいですね。

じゃあ何か集客の工夫はしているわけで?

日本習字による入会キャンペーン中です。新規入会で習字セットがもらえたり(要件あり)、紹介者にはプレゼントがもらえたりといったキャンペーンです。

あとは自分でチラシをポスティングしたり、Google広告、区役所のバナー広告とか、SNS等に写真を掲載してなるべく教室の様子が具体的にイメージしやすくする試みをしていますがなかなか難しいですね。

その他に悩みごと、困りごとはあります?

そうですね。。。悩みとか困っているというよりは、迷いというか。基本的なあいさつ等のコミュニケーションが図れない子が一定数いることですね。

「アイコンタクト」だけでも良いんです。単にうなづくとか。そこで気持ちはある程度くみ取れることもありますし。何らか通じている、ということさえわかれば、こちらも気もちが楽になるんですが。

それはきっと緊張よ!

はじめのうちはそうかな?と思いますが、数回通っていても同じ状況の場合は緊張ではないと思います。教室の雰囲気は厳しくも、固くもないはずですので。。。コロナで登校できない状況が長いことで、そういったことが身につきにくい状況なのかな、とも思ってみたり。

そういった基本的なコミュニケーションの部分についても、教室で言及するかどうか、迷っているわけです。

いろんな子がいるってことね。

そうですね。さっきのこと以外には、現在のところ迷いはありません。

字を書くことだけでなく、いろんな特技をもつ生徒さんがいますので、いろいろ教えてもらいながら楽しく過ごしています。他の習い事の話は教室を運営していくうえで参考になることも多くあります。

学校やご家庭での出来事など楽しい話もたくさんしてくれます。いろんな不満や嫌なことを吐き出して帰る子もいますし、そういう場であっていいと思っています。

ということは、お話しながら練習ですか?

コロナのこともありますので、なるべく会話は控えつつも、やはりいろんな話はします。しゃべってばかりで練習していない場合は、もちろん書くように促します。

毎回の練習はどんなふうに進むんですか?

小中学生の場合は、毎月の手本で硬筆と毛筆がセットになっていますので、まずはその月の硬筆課題について1枚書いて添削、2枚目で完成、その後に毛筆の基本線の練習、毛筆の課題の練習、添削、練習・・・で1時間半くらいです。

みんなで同じペースで揃ってやるんですか?

いえ、教室に来る時間もみんな多少ズレますし、硬筆はたいてい2枚書いてもらいますが、毛筆は少ない子で2~3枚、多い子で20枚くらい書く子もいますので、そこは幅があるというか、それぞれのペースですすめるようにしています。

聞き手:瀧ノ上志づ(瀧ノ上オフィス)